地球温暖化をめぐる「科学」論議

07/02/20の田中宇氏が、地球温暖化のエセ科学という論評を書いている。

田中氏の論評は、中々、面白いと思っている。資料も、広く渉猟し、論説の典拠を丁寧に挙げている点
も好感が持てる。しかし、とかく陰謀論的な議論に走りがちなのは如何にも浅薄だ。

この論評でも、

IPCCには130カ国の2500人の科学者が参加している。ほとんどの学者は、政治的に中立な
立場で、純粋に科学的な根拠のみで温暖化を論じようとしている。しかし、ロンボルグによると、
問題はIPCCの事務局にある。事務局の中に、温暖化をことさら誇張し、二酸化炭素など人類の
排出物が温暖化の原因であるという話を反論不能な「真実」にしてしまおうと画策する「政治活動家
がいて、彼らが(イギリスなどの)政治家と一緒に、議論の結果を歪曲して発表している。(中略)
IPCCの報告書で問題にすべきもう一つの根本的なことは、コンピューターのシミュレーションプロ
グラムを絶対視してしまっていることである。気候のメカニズムは非常に複雑で不確定要素が大きく、
人類が分かっていないことも多い。分かっていないことを適当にシミュレーションに置き換える際に、
政治的な思惑が入ってくる可能性は十分にある。(中略)
なぜ、温暖化問題はエセ科学が主流になっているのか。誰がそれを企図しているのか。それは、次回の
記事で考察するが、かいつまんでいうと「イギリスを中心とする先進国が、発展途上国の成長率の一部
をくすねるために考えついたのが、地球温暖化問題である」というのが私の分析である。

と論じている。

田中氏の論評に関して、環境問題が専門の安井至氏が地球温暖化はエセ科学か(07/03/04)と題して、
三人の対談の形式で批判している。一言で云えば、田中氏の論評は「正しいが少ない情報と正しくない
多くの情報がごちゃ混ぜ状態」だとの評価を下している。

物凄い大雑把な言い方をすると、「地球温暖化」問題とは、
自然の揺らぎ、主として太陽の変動とそれを受け取る地球側の自然要因による変化と人間活動による
温度変化との確率評価を、どの程度に見積もり、各諸要素にどんなパラメータを割振るかという問題だ
と言い換えて良いかと思う。
この点で、田中氏の主要な論点は二つある。
1.自然の揺らぎを実証するデータを無視している。
2.温暖化を予測するシュミレーション・プログラムには不確定要素が多くあるので、政治的思惑で
都合の良いプログラムが作られる可能性がある。

「自然の揺らぎ」について、田中氏が強調するのは、デンマークの学者ヘンリク・スベンスマルク
(Henrik Svensmark)らの研究で、

宇宙は、星の爆発などによって作られる微粒子(荷電粒子)で満ちており、微粒子は地球にも常にふり
そそぎ「宇宙線」として知られている。大気圏にふりそそぐ宇宙線の微粒子には、その周りにある水蒸
気がくっついてきて水滴になり、雲をつくる。ふりそそぐ宇宙線が多いほど、大気圏の雲は多くなる。
(ほかに雲の水滴の核になるものとして、地上から舞い上がった塵の微粒子がある)

と紹介している。要するに、宇宙線によって「大気圏の雲」が多くなれば、地球に届く太陽光線は少なく
なり、逆になれば、太陽光線は増えて、地球は温暖化する。地球に降り注ぐ宇宙線の量は、太陽の黒点
活動によって規制され、黒点活動が活発になれば、電磁波が多く放出され、宇宙線が吹き飛ばされるので
地球は温暖化するというわけだ。
田中氏は、

IPCCの報告書では、温暖化の原因は、二酸化炭素など温室効果ガスの増加に集約されており、他の
原因については少ししか議論されていない。だが、最近の研究で、実は二酸化炭素よりも太陽黒点
活動の方が、温暖化に関係しているのではないかという説が有力になっている。

と断言しているが、その根拠は何も示してはいない。

シュミレーション・プログラムには、当然、何%かの比率で「自然の揺らぎ」要素が考慮されているはず
で、その妥当性は、専門家の議論と事実による検証を待つしかない。
この点については、どうみても安井氏の批判が妥当だ。

気候変動の科学は、特にシミュレーションの細部に関しては、われわれにとっても正しく理解するのが
難しいレベルになっている。われわれも正直な話、ど素人である。これを国際政治の専門家が理解できる、
と思う方がおかしい。恐らく、先に結論があって、それに合う見解だけを集めるという作業をする
ことになってしまうのではないだろうか。

田中氏の議論は、平たく言えば、陰謀論先にありきで、それに都合の良い議論に肩入れしていると言わ
れても仕方ない。ひいきの引き倒しだな。

スベンスマルクの論文やらスベンスマルク効果を探索していて、
マスコミに踊らされないための地球温暖化論入門を見つけた。
まあ、こういう意見もあるよということでは注目かな。