モンゴル史についての覚書

岡田英弘は【世界史の誕生】で、世界史はモンゴル帝国とともに始まったと喝破した。
その意味を、簡潔明瞭に記した【歴史とはなにか】/文春新書から引用すると、
モンゴル帝国は、東アジアから北アジア中央アジアを通って、東ヨーロッパ、西南アジア、
南アジアに通ずる「草原の道」を支配し、平和と秩序を打ちたてて、人と物の交流を盛んに
した。その結果、東の中国文明と西の地中海文明、及び地中海世界と隣り合わせの西ヨーロ
ッパ文明が、初めて直接に結びつき、互いに影響しあうようになるという現象が起こった。
モンゴル帝国のおかげで、それまで別々に存在した、二つの歴史のある文明が合流して、世
界史というものが成立する舞台が、このとき初めて準備されたということだ
。154.p
と書いている。
ユニークな見解には違いないが、これだけでは外延的拡大が世界史の舞台を準備したという
指摘に留まる。そのほか三点を指摘しているが、特に注目に値するのは、次の指摘。
12−13世紀の金帝国の時代に華北で誕生した資本主義経済が、草原の道と通って、地中海世
界に伝わり、地中海世界から更に西ヨーロッパ世界へと広がって、現代の幕を開けたことで
ある。...
モンゴル帝国では、早くも13世紀に、世界最初の不換紙幣を発行し、しかもこれが成功して
約百年にわたって広く流通した。紙幣は、小額の取引にも用いられた。青銅銭はあることは
あったが、名目だけのものであった
。156.p

モンゴルというと、もっぱら破壊と殺戮を以て帝国を拡大したかの俗説が罷り通っている中
モンゴル帝国の世界史的意義を確認した功績は大きい。

モンゴル帝国の分析という点では、むしろ
モンゴル帝国の興亡】上下/杉山正明/講談社現代新書が手ごろか。
もし【集史】がなければ、モンゴル帝国史は語れない。そればかりか、中央ユーラシアに展開した
トルコ・モンゴル系の遊牧民たちの歴史も、再構成が難しくなる。そしてイスラーム史」、イラン史
も、実は大きな史料源を失うことになる。【集史】が人類史上、空前の史書であった。そして、その
後も、実はその規模と視野の広大さ、加えて何よりもそのデータの根本性において、これに匹敵する
史書は作られていないと云って差し支えない。...それは、モンゴルが、「世界」というものを
明確に意識していた証拠となる。人類の歴史は、モンゴル時代に至って、真にその名に値する世界史
を持った
。上巻14.p(08/03/03追記)


WEBサイトで参照できるものは、
◆モンゴルに関する参考文献
○「モンゴル」をキーワードに検索した外大図書館の本一覧- 99/02/17
http://www.geocities.co.jp/mongolkenkyukai/class/b-gaidai.html
○モンゴル関連書籍/歴史(中・近世)
http://www.geocities.jp/mongol_link/Books_Index/Books_4.html
モンゴル帝国と大元ウルス/杉山 正明
http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?isbn=9784876985227
学士院賞
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2007/031201.html#sugiyama
○クビライの挑戦――モンゴル海上帝国への道/杉山 正明/朝日新聞社
山内 昌之/書評
http://www.suntory.co.jp/sfnd/gakugei/si_reki0036.html
○トプカプの『集史』/杉山正明モンゴル帝国の興亡」より
http://ethnos.exblog.jp/1956864/
○モンゴルが世界史を覆す/目次/杉山正明
http://ogionblog.blog48.fc2.com/blog-entry-67.html
○大モンゴルの時代 (世界の歴史9)/簡単な紹介
http://www011.upp.so-net.ne.jp/hu-xi/bcg/sekai9m.html
○『集史』日本語訳
http://homepage3.nifty.com/yyajima/rashid.html

◆その他
モンゴル帝国及び関連リンク/日本語サイトでは最も充実している。
http://find-the-law.com/jp/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%AB%E5%B8%9D%E5%9B%BD.htm
○集史
http://find-the-law.com/jp/%E9%9B%86%E5%8F%B2.htm
○赤坂講師のサイト/「チャガタイ家とその系譜」
http://www.aoni.waseda.jp/akasaka/akasaka.html
○モンゴル史研究と考古学的成果
http://jinbunweb.sgu.ac.jp/~siberia/pdf/2003_11_15/resume_07.pdf

Mongolian Culture、包括的サイトとして最も充実している。
http://www.mongolianculture.com/