時計遺伝子の覚書

産業技術総合研究所から【きちんと分かる時計遺伝子】が出版された。
内容紹介に、
1日の周期である概日リズムは30億年以上前の地球で生まれたシアノバクテリアから、植物は
もちろん人間や昆虫に至るまですべてが備えている。驚くことに、時計遺伝子は人間の髪の
毛1本まで、すべての細胞で働いています
。時計遺伝子の研究はこの10年で急速に進展し、睡眠、
肥満、がん、心筋梗塞などの起こりやすさも時計遺伝子由来の蛋白質に調節される事
わかってきています。その研究の最前線を紹介します。

と出ている。
目次の詳細は、ここを参照

体内時計(生物時計)の概念は、古くから知られている。30余年前の百科事典には
生物時計は恒常条件下では約24時間周期で動き続け、その周期は通常の温度範囲内では
ほとんど変わらない。しかし自然条件下では生物時計は外界の光周期による調整を受けるので,
昼夜変化ときちんと同調する。生物時計が生得的なものであることは,ネズミやショウジョウ
バエなどを何世代も恒常条件下で飼育しても,その周期性が失われず,かりに失われてもせん
(閃)光のような単一の光刺激で約24時間のリズムを発現させることからもわかる。体内に
おける生物時計の所在については動物でよく研究されており,ゴキブリやコオロギの歩行活動
では脳の視葉に,ヤママユガ科のサクサンやセクロピアサンの羽化や飛翔(ひしよう)行動では
脳の主葉にあることがわかっている。軟体動物のアメフラシから摘出した内臓神経節中には
日周変動をもって自発的にインパルスを出す細胞が一つ見つかっている。また,高等脊椎動物
では睡眠覚醒,飲水行動,ホルモン分泌などのリズムに間脳視床下部の視交叉上核が重要な
働きをしていることが示されている。」「ハムスターから切り出された腸の断片の蠕動(ぜん
どう)運動やネズミの培養肝細胞の酵素活性に概日リズムが見られることは,生物時計が単に
脳だけにあるのではなく,体の種々の器官にもあることを示唆している。系統発生的に見て,
概日リズムは単細胞生物以上のほとんどの生物に見られるので,多細胞生物のすべての細胞が
生物時計をもっているとさえ考える学者もいる
。少なくともある種の多細胞生物が複数の時計
をもつことは否定できず,その生物が自然条件下で生活している間はそれら複数の時計が互い
に同調し,全体として調和のとれた状態を保っているものと推定される
。」
と書かれている。
その要点を摘記すると、
・生物時計は生得的なもので、約24時間周期である。
・生物時計が脳だけに所在するのではなく、体の種々の器官にもあることを示唆している。
・多細胞生物のすべての細胞が生物時計をもっているとの説もある。


最近の研究成果の最も重要な要点は、下線部を比較すると分かる。すなわち
・時計遺伝子は、身体のどこかに局在するのではなく、全ての細胞にある。
・身体全体の時計遺伝子は、バラバラに働いているのではなく、同調している。
・同調のバランスが崩れると、身体的不調を起こす(或いは逆か?)


◆「時計遺伝子」で検索すると、116万件ヒットする(google)。
1ページ目から、面白そうなサイトを幾つか拾っておく。時計遺伝子についての
本格的な探索は、後日、継続的に。
時を刻む遺伝子/体内時計の不思議、pdf
時計遺伝子のニューフェイス “時計じかけのオレンジ”を発見

  • 体内時計システムの完全理解への一歩 - 、07/06/19

○「生物の生物時計はどうやって時を刻むのか:新たなメカニズムを発見」、04/11/17
生物の時計遺伝子の研究から生まれた超高速遺伝子分析器、05/06/01