金融・景気指標の読み方/その1

アメリカ金融・景気指標の読み方】/L・H・ハントは、20年前に出版された本だが、
現在でも、適当な類書がないのかどうか、古書で定価の四倍から八倍近い価格で売られ
ている。ちなみに原題はA TIME TO BE RICH というものだ。

この20年間にも、様々な経済学説が現れては消えていった。また世界経済はインフレ
基調からデフレ基調に転換するなど、歴史的な転換があった。しかし、基本的な金融・
景気指標を如何に正確に読み取るか、その目を養う上での、この本の価値は失われて
いないのかどうか、十数年ぶりに読み直して興味深い点を摘記してみよう。
この本が、出版された当時は、まだインターネットも普及しておらず、取り上げられ
ている指標の殆どは、現在のように簡単にネット上から参照することも出来なかった。
それを考えると、まさに隔世の感がある。

◆経済の五段階サイクル
・軟化、下降、回復、上昇、成熟の五段階を繰り返す
・各段階には特徴的な現象が見られ、正確に読み取る測定器がある
・各段階の持続期間は予め読み取ることは出来ない
・各段階の転換、或いは移行を読み取ることが決定的に重要である

◆経済指標の信頼性
・数ある指標の中でも、信頼性のある指標はわずかである。信頼性の高い指標とは
イ.過去の修正幅が最小限であること(速報値を確報値の比較など)
ロ.循環サイクルの移行期を正確に示すこと

○最も信頼性の高い指標は「新規失業保険受給申請者数」(毎週木曜に労働省発表)
米国経済指標レポート(データ一覧参照&経済指標カレンダー)&「経済指標の見方
日本には「失業保険受給申請数」に該当する統計はない。代行しうる指標は
・景気後退の数ヶ月から数十ヶ月前に増加し始める
・回復期の申請者数の減少の先行期間はもっと短い、ほぼ同時のことも多い
・不規則な短期的変動を示すことがあり、四週間移動平均を使うのが適当

○ほぼ同等の信頼性のある指標
1.製造業平均労働日数(各月第一金曜日、労働統計局)
2.非農業部門雇用者数と労働時間(同上)
3.鉱工業生産指数、工業社会からサービス社会に移行するにつれ、その比重が低下
している難点がある。
4.求人広告指数、経済の移行期の先行期間は極めて短い

○その他のやや信頼性のある指標
1.住宅着工件数と民間住宅許可件数
・住宅着工件数は、天候に左右される面があり、やや信頼性が劣る
・着工件数と許可件数との間には、直接的な関連はない
・許可件数は景気「下降」後期に上昇し始め、着工件数がこれに続く
・景気拡張「成熟」期に入ると、直ぐに低下し始め、着工件数がこれに続く
・景気回復の始まる前には、必ず住宅市場は底を打つ
2.総合景気先行指数
・興味深い題材を扱っているが、要約によってエキスの大部分が省力されている
・一時的撹乱要因が過大に扱われる傾向もあるが、経済の変動を読むには有益だ