時計遺伝子の覚書
◆産業技術総合研究所から【きちんと分かる時計遺伝子】が出版された。
内容紹介に、
1日の周期である概日リズムは30億年以上前の地球で生まれたシアノバクテリアから、植物は
もちろん人間や昆虫に至るまですべてが備えている。驚くことに、時計遺伝子は人間の髪の
毛1本まで、すべての細胞で働いています。時計遺伝子の研究はこの10年で急速に進展し、睡眠、
肥満、がん、心筋梗塞などの起こりやすさも時計遺伝子由来の蛋白質に調節される事が
わかってきています。その研究の最前線を紹介します。
と出ている。
目次の詳細は、ここを参照
◆体内時計(生物時計)の概念は、古くから知られている。30余年前の百科事典には
「生物時計は恒常条件下では約24時間周期で動き続け、その周期は通常の温度範囲内では
ほとんど変わらない。しかし自然条件下では生物時計は外界の光周期による調整を受けるので,
昼夜変化ときちんと同調する。生物時計が生得的なものであることは,ネズミやショウジョウ
バエなどを何世代も恒常条件下で飼育しても,その周期性が失われず,かりに失われてもせん
(閃)光のような単一の光刺激で約24時間のリズムを発現させることからもわかる。体内に
おける生物時計の所在については動物でよく研究されており,ゴキブリやコオロギの歩行活動
では脳の視葉に,ヤママユガ科のサクサンやセクロピアサンの羽化や飛翔(ひしよう)行動では
脳の主葉にあることがわかっている。軟体動物のアメフラシから摘出した内臓神経節中には
日周変動をもって自発的にインパルスを出す細胞が一つ見つかっている。また,高等脊椎動物
では睡眠覚醒,飲水行動,ホルモン分泌などのリズムに間脳視床下部の視交叉上核が重要な
働きをしていることが示されている。」「ハムスターから切り出された腸の断片の蠕動(ぜん
どう)運動やネズミの培養肝細胞の酵素活性に概日リズムが見られることは,生物時計が単に
脳だけにあるのではなく,体の種々の器官にもあることを示唆している。系統発生的に見て,
概日リズムは単細胞生物以上のほとんどの生物に見られるので,多細胞生物のすべての細胞が
生物時計をもっているとさえ考える学者もいる。少なくともある種の多細胞生物が複数の時計
をもつことは否定できず,その生物が自然条件下で生活している間はそれら複数の時計が互い
に同調し,全体として調和のとれた状態を保っているものと推定される。」
と書かれている。
その要点を摘記すると、
・生物時計は生得的なもので、約24時間周期である。
・生物時計が脳だけに所在するのではなく、体の種々の器官にもあることを示唆している。
・多細胞生物のすべての細胞が生物時計をもっているとの説もある。
◆最近の研究成果の最も重要な要点は、下線部を比較すると分かる。すなわち
・時計遺伝子は、身体のどこかに局在するのではなく、全ての細胞にある。
・身体全体の時計遺伝子は、バラバラに働いているのではなく、同調している。
・同調のバランスが崩れると、身体的不調を起こす(或いは逆か?)
◆「時計遺伝子」で検索すると、116万件ヒットする(google)。
1ページ目から、面白そうなサイトを幾つか拾っておく。時計遺伝子についての
本格的な探索は、後日、継続的に。
○時を刻む遺伝子/体内時計の不思議、pdf
○時計遺伝子のニューフェイス “時計じかけのオレンジ”を発見
- 体内時計システムの完全理解への一歩 - 、07/06/19
○「生物の生物時計はどうやって時を刻むのか:新たなメカニズムを発見」、04/11/17
○生物の時計遺伝子の研究から生まれた超高速遺伝子分析器、05/06/01
モンゴル史についての覚書
岡田英弘は【世界史の誕生】で、世界史はモンゴル帝国とともに始まったと喝破した。
その意味を、簡潔明瞭に記した【歴史とはなにか】/文春新書から引用すると、
モンゴル帝国は、東アジアから北アジア、中央アジアを通って、東ヨーロッパ、西南アジア、
南アジアに通ずる「草原の道」を支配し、平和と秩序を打ちたてて、人と物の交流を盛んに
した。その結果、東の中国文明と西の地中海文明、及び地中海世界と隣り合わせの西ヨーロ
ッパ文明が、初めて直接に結びつき、互いに影響しあうようになるという現象が起こった。
モンゴル帝国のおかげで、それまで別々に存在した、二つの歴史のある文明が合流して、世
界史というものが成立する舞台が、このとき初めて準備されたということだ。154.p
と書いている。
ユニークな見解には違いないが、これだけでは外延的拡大が世界史の舞台を準備したという
指摘に留まる。そのほか三点を指摘しているが、特に注目に値するのは、次の指摘。
12−13世紀の金帝国の時代に華北で誕生した資本主義経済が、草原の道と通って、地中海世
界に伝わり、地中海世界から更に西ヨーロッパ世界へと広がって、現代の幕を開けたことで
ある。...
モンゴル帝国では、早くも13世紀に、世界最初の不換紙幣を発行し、しかもこれが成功して
約百年にわたって広く流通した。紙幣は、小額の取引にも用いられた。青銅銭はあることは
あったが、名目だけのものであった。156.p
モンゴルというと、もっぱら破壊と殺戮を以て帝国を拡大したかの俗説が罷り通っている中
モンゴル帝国の世界史的意義を確認した功績は大きい。
モンゴル帝国の分析という点では、むしろ
【モンゴル帝国の興亡】上下/杉山正明/講談社現代新書が手ごろか。
⇒もし【集史】がなければ、モンゴル帝国史は語れない。そればかりか、中央ユーラシアに展開した
トルコ・モンゴル系の遊牧民たちの歴史も、再構成が難しくなる。そしてイスラーム史」、イラン史
も、実は大きな史料源を失うことになる。【集史】が人類史上、空前の史書であった。そして、その
後も、実はその規模と視野の広大さ、加えて何よりもそのデータの根本性において、これに匹敵する
歴史書は作られていないと云って差し支えない。...それは、モンゴルが、「世界」というものを
明確に意識していた証拠となる。人類の歴史は、モンゴル時代に至って、真にその名に値する世界史
を持った。上巻14.p(08/03/03追記)
WEBサイトで参照できるものは、
◆モンゴルに関する参考文献
○「モンゴル」をキーワードに検索した外大図書館の本一覧- 99/02/17
http://www.geocities.co.jp/mongolkenkyukai/class/b-gaidai.html
○モンゴル関連書籍/歴史(中・近世)
http://www.geocities.jp/mongol_link/Books_Index/Books_4.html
○モンゴル帝国と大元ウルス/杉山 正明
http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?isbn=9784876985227
学士院賞
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2007/031201.html#sugiyama
○クビライの挑戦――モンゴル海上帝国への道/杉山 正明/朝日新聞社
山内 昌之/書評
http://www.suntory.co.jp/sfnd/gakugei/si_reki0036.html
○トプカプの『集史』/杉山正明「モンゴル帝国の興亡」より
http://ethnos.exblog.jp/1956864/
○モンゴルが世界史を覆す/目次/杉山正明
http://ogionblog.blog48.fc2.com/blog-entry-67.html
○大モンゴルの時代 (世界の歴史9)/簡単な紹介
http://www011.upp.so-net.ne.jp/hu-xi/bcg/sekai9m.html
○『集史』日本語訳
http://homepage3.nifty.com/yyajima/rashid.html
◆その他
○モンゴル帝国及び関連リンク/日本語サイトでは最も充実している。
http://find-the-law.com/jp/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%AB%E5%B8%9D%E5%9B%BD.htm
○集史
http://find-the-law.com/jp/%E9%9B%86%E5%8F%B2.htm
○赤坂講師のサイト/「チャガタイ家とその系譜」
http://www.aoni.waseda.jp/akasaka/akasaka.html
○モンゴル史研究と考古学的成果
http://jinbunweb.sgu.ac.jp/~siberia/pdf/2003_11_15/resume_07.pdf
◆Mongolian Culture、包括的サイトとして最も充実している。
http://www.mongolianculture.com/
地図の楽しみ
BookOffで105円で買ってきた【GIS/電子革命地図】という本をパラパラ捲っていたら
ふと面白い一節にあたった。
伊能忠敬の作成した地図を、幕府天文方の高橋景保がシーボルトに内緒で手渡したこ
とから派生したシーボルト事件は有名だ。この地図が、後にペリー提督の手元に渡り
「この地図の驚異的な緻密さを見た提督は、...このような地図を作成できる民族
を武力制圧するのは愚策と判断して交渉による開国」の方針に転換したというのだ。
僕には初耳で、面白すぎる話で真偽のほどは判りかねる。
ともあれ、それがきっかけで溜まっている地図関連サイトを整理してみた。
************************************************
○地図の歴史の部屋
http://wwwsoc.nii.ac.jp/icic/08_MUSEUM/03_HISTRY_ROOM/history1.html
イ.紀元前約1500年前に描かれたとされる「カモニカの地図」(イタリア)
ロ.紀元前約700年前に作られた「バビロニアの世界図」
ハ.紀元前150年頃の「プトレマイオスの世界図」
ニ.中世ヨーロッパの「TO図」/「TO図」については、ここの「キリスト教の世界観」を参照
ホ.1154年にアル・イドリーシが描いた円形世界地図「イドリーシの地図」
ヘ.最古の地球儀とされる「マルチン=ベハイムの地球儀」(1492年製作:ニュルンベルク国民博物館蔵)
ト.トスカネリの地図
チ.メルカトルの地図
○日本地図の歴史
http://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/rekihaku/inou/contents.htm#2
○改正日本輿地路程全図
http://www.tosyokan.city.maebashi.gunma.jp/digital/zenzu.htm
○地図についてのあれこれ
・古地図のネット販売の「京極堂」のサイト
地図の種類/地図目録の目録(図書館・博物館所蔵地図目録の一覧)/古地図画像のあるサイト・
リンク集/地図の歴史(世界年表)/日本の特異点(東端・西端・高点など様々な特異点&ウォちず)
/日本百名選(民家、道、滝など百選)/日本三名物/日本さくら情報(桜名所&ウォちず)
/日本の領土(領土の変遷/年表)
○古地図画像のあるサイト/リンク集
http://www.kyougoku-do.com/oldmapewb.htm
◆地図に関する情報館
○世界地図を作ろう
http://atlas.cdx.jp/
地図と投影法の説明(地図作成用ソフト)。地図の歴史、主要用語集、世界の国々
○官製地図を求めて
http://homepage3.nifty.com/homipage/map/
・各国官製地図の入手先・入手方法、各国地図事情(各国の地図制作状況、作成機関のWebサイト、
地図の入手先などの紹介)、鉄道のある地図(保存鉄道や登山鉄道と、それが記載されている地図
の図番の一覧表、鉄道の運行状況がわかる現地サイトへのリンク集)
○岐阜県立図書館「世界分布図センター」
http://www.library.pref.gifu.jp/map/
世界分布図センターは、全国唯一の「県立の地図の資料館」で、「古地図」、「国土地理院関係地図」、
「旧ソ連製地図(旧ソ連が作製した東欧・アジア・アフリカ諸国の地図)」、「外邦図(旧日本軍が作製
した国外の地図)」を4本柱に、世界約180余の国と地域の地図とその関連資料14万点を収蔵している。
収蔵目録は公開されているが、実際の地図はWEB上では見られないのが残念。
○地図センター
http://www.jmc.or.jp/
イ.「地図センター電子国土サイト」
http://denshikokudo.jmc.or.jp/
地図から全国の公共施設、伊豆・箱根の宿情報、日本の主要な山1003山を調べられる。国の機関9,600件、
学校43,400件、郵便局24,800件など。他に地図上から緯度・経度、距離の計測などが出来る。
ロ.「How To 電子国土」
http://www.jmc.or.jp/Howto/Howto-top.htm
都道府県別/発信情報別/災害地域別の電子地図が公開されている。
例えば、京都府では電子地図上に神社仏閣や史跡、遺跡が表示されたり、岩手県では熊の出没情報が
表示されたり、新潟県上越市では除雪車の活動状況が表示されたり、これからの活用が楽しみなサイトだ。
ハ.「作ってみよう!電子国土サイト」
http://www.jmc.or.jp/Howto/step-frame.html
これは文字通り、自分で「電子国土サイト」を作成して、公開するための案内。
ニ.地図info
http://info.jmc.or.jp/index.html
地図上から地域を選択して、その地域の統計情報(人口密度、人口構成比マップ)
を見るサイト。
◆テキサス大学地図コレクション
http://www.lib.utexas.edu/maps/historical/index.html
○世界地図、歴史地図、テーマ地図(温度、エネルギー、人種、宗教、経済・産業、
土地利用、軍事など)、その他鳥インフルエンザ、西ナイルウィルス、津波、SARS
イスラエル・レバノン戦争などのテーマ地図
・外国の地図に関するコレクションは、豊富にあって、その整理は一大事業といっても良い。
そんなものは、最初から目指してはいないが、自分の手元にあるだけでも整理しておかないと
使えない。まあ、取敢えず今回はテキサス大学のみ。
○なお、地図に関する情報館には、他の言語でのこのカテゴリ一覧が載っている。
経済統計/経済状況の分析及び分析用具
経済統計/経済状況の分析及び分析用具のサイトは様々なものがある。
取敢えず、日常的に利用しているものを挙げておく。新しい注目サイトを
見つけるごとに更新し、過去のものは削除すること。
◆Yahoo!カテゴリ「経済統計と経済指標」/リンク集
○これはリンク集、概ね公的機関の統計データへのリンクが中心
○民間または個人運営のサイトの中で面白いのは
1.Datafile of US Economy
・米国経済の主要経済データへのリンク集で、予想外に広範囲なリンク集で
使い勝手が良さそう。
2.経済・社会データランキング
・OECD諸国、アジア諸国の経済、社会のランキング。検索可能。
3.日本の景気・経済情報快速ネットワーク「電猫」
・政府の月例経済レポートの概要を載せている点が特徴
4.社会実情データ図録
・実に広範囲の社会統計データをグラフ化して表示、グラフ化が特徴
5.日本経済指標と米国経済指標
・90項目の経済指標を 月別に表とグラフで掲載
6.京都大学環太平洋データベース
・環太平洋地域各国の基本経済統計データを文章と数値で国別に整理、検索。
長期データと計量予測が特徴で、各国の概観をつかむのに重宝。
◆以上のYahooのリンク集に掲載されていないサイトの中で、各種経済分析レポート・統計データ
など最も包括的なポータルサイトは
○経済レポート専門ニュース
◆この他、
○日経平均株価225種
○外国為替チャート
○N.Y.DOW JONES
地球の温暖化/2
地球温暖化をめぐる論議には、単なる雑音と、本質的に重要な論議とがごたまぜに雑居
している。素人が、とても近寄りがたいシュミレーション・モデルが構築される一方、
将来の予測理論には、本質的に推測の域を出ない要素が内在し、そこに素人が口を挟む
余地があるからだ。まして、それが、場合によっては産業革命以来のビジネス・チャンス
の機会ともなれば、自ずと雑音も高まらざるを得ない。
08/02/05に触れた田中氏の「温暖化問題はエセ科学が主流」という議論も、環境論者の
議論の多くも、単なる雑音だと考えている。但し、田中氏が、自分の議論の論拠として
挙げているヘンリク・スベンスマルクの議論そのものは、その重みをどの程度に評価す
るかは別問題として、雑音とは考えていない。
こんな風に、無数にあるサイトの議論を交通整理して捉える必要がある。
専門的に研究しているわけではないから、折に触れて、本質的に重要な議論を忘れない
ためのメモとして取り上げておく。
◆東京大学気候システム研究センターの「気候システムとは」
まず、ここは熟読する必要がある。
◆地球観測研究センターのリンク集
リンク先の中身は、まだ精査していないが、重要なものが含まれている。
◆全球化学輸送・気候モデル
及び同サイトのリンク集
・以上は、google で「東京大学気候センター」と検索した中からピック・アップしたもの。
更に検討の必要あり。
・「地球の鼓動」で検索して、偶々、拾ったサイトに「地球の鼓動に耳をすませば」と
題する東海大学新聞連載コラムがある。その中に、興味深いコラムが二つ。
◆地球温暖化と長期観測の重要性
ここに、「初めて大気中のCO2濃度の増加傾向」を指摘したチャールズ・キーリング博士の
先駆的業績が「CO2濃度の経年変化グラフ」とともに紹介されている。
米国スクリプス海洋研究所のチャールズ・キーリング博士がハワイのマウナロア火山で
1957年から観測してきた大気中のCO2濃度の経年変化グラフです。このグラフから、
CO2濃度の年サイクルの周期的な変動と長期的な上昇傾向が読み取れます。年サイクルの
変動は、CO2を吸収する植物の成長過程などにより、地球のCO2の吸収量が年サイクルで
増減している(言わば地球が呼吸している)様子を示しています。しかし、地球が吸収
できるCO2の量には限度があり、人間活動が排出するCO2の増加に伴い、大気中のCO2濃度
は長期的な上昇傾向を示して来たわけです。
◆地球温暖化における雪氷の役割
太陽からの放射エネルギーの吸収と反射の割合及び熱循環サイクルの簡単なメカニズム
地球の温暖化
例によって「Earth Trends」の左側欄の「Climate and Atmosphere」から
Searchable Database を選択して、その中の5番目「Climate: Global mean
surface temperature」を選ぶと、world と出てくるから、「world」を
選択して、「Get all country data for selected regions 」にチェックを
入れて「next」をクリック。
1880年から2005年までの全部を選択して、「get data」をクリックすると、
この125年間の経年データが表示される。
1880年から20年毎の地表面の平均的な気温は、
1880年13.75、1900年13.90、1920年13.81、1940年14.05、1960年13.99、
1980年14.18、2000年14.33、20514.63度など。
このデータの典拠は何だとみると、下欄に載っている。
NASAの
1.GISS Surface Temperature Analysis
2.Global Temperature Trends: 2007 Summation
が分かりやすい。
「地球の温度」を一体どこで、どのような方法で測れば、適正な温度を測れるか
という問題は、専門家でないからサッパリ見当もつかない。また実際に測定され
ている方法が適正かどうかも、本当のところは分からない。
まして、最近のデータに関しては、同一方法で測定されていれば、絶対値はとも
かく、経年変化の傾向には信頼性があるが、過去の「地球の温度」という概念の
ない時代の温度の推定値やら推定方法が適正かどうかなど分かるはずもない。
たとえ専門家といえども、確信を持って云える筈もないし、云った所で実証は出
来ない。
そんな留保はあるが、「地球の温暖化」といえども、決して一直線に進んできた
わけではなく、波があり、上昇トレンドの中でも停滞期があると分かる。
すなわち、1880-1910年が第一の足踏み期、1940-1980年が第二期の足踏み期。
これに対して1910−1940年、1980年以降今日までが急上昇期。
この長期的傾向を、自然の揺らぎと人間的活動の組み合わせによって、どのよう
に解析しているか興味深い問題だ。
しかし、これは気象学者だけで良くなし得る解析ではなく、社会学者・経済史家
歴史家の共同作業が不可欠だということは、長期的グラフを見ているだけでも分
かる。
タンパク質の分解と合成
「自家融解」は、昔から良く知られている。例えば、10年ほど前の百科事典を開いても
「細胞の中にリソソームというタンパク質分解酵素を含む径約0.4μmの胞状の構造があるが,
いつもは,このリソソームは食細胞運動によって細胞内に入ってきた食胞と融合して,食胞
内物質を消化して分解物を細胞質に出す。ところが細胞が死ぬと,このリソソームの膜が破
れて細胞質にタンパク質分解酵素が働き無機物に分解してしまう。細胞が健在のときには細
胞の消化器官として活動するリソソームは,細胞が死ぬと,こんどは逆に細胞全体を分解し
てしまうので別名〈細胞の自殺用ケース〉ともいわれる」
といったようなことが書いてある(98年版平凡社世界百科事典)。
一方、
http://q.hatena.ne.jp/1202695716
の「ユビキチン化/プロテアソーム経路の分解とリソソーム経路の分解では、何が違うので
しょうか。」という質問、殊に「ユビキチン化/プロテアソーム経路の分解」の話題は、ごく
最新の知見に属する。
人間の身体は、タンパク質だけで出来ているわけではないが、生命は遺伝情報を媒介にした
タンパク質の様態だと極言しても良いくらい枢要の物質だ。
ウィキペディアを見ると、「タンパク質の生体における機能」として(やや混乱した解説との
印象も受けるが)、生体構造、生体内の情報のやりとり、運動、抗体、栄養の貯蔵・輸送、
酵素などを指摘している。
動植物の身体を構成するタンパク質の種類は、種によって異なっており、人間の身体は概ね
4-5万種類のタンパク質で出来ている。ところが、種によって、また同じ人間でも身体の部位や
体内での働きによって数万種類の異なるタンパク質も、元を質せば20余種のアミノ酸の複合体
(正式には重合という)である。
アミノ酸が鎖のようにつながって一次構造を作り、それが折りたたまれて二次構造を作り、
さらに複合して三次・四次構造まで形成している。タンパク質の種類は、素材となるアミノ酸
の並び方と構造によって決まり、その並び方の順番と構造は全て遺伝子情報に書き込まれ、
指先に爪の代わりに間違って目玉が出来たなんて奇妙なことが起こらないようになっている。
また動植物の種によって、タンパク質の種類は異なっているにもかかわらず、アミノ酸という
共通素材によって作られているからこそ、食物として動植物を摂取することで自分の身体の
代謝が可能になる。人間の身体は、一見、恒常性を保っているように見えるけれど、実は、一時
の休みもなく新陳代謝され交替されている。逆説的な表現になるが絶え間なく変換され、交替
されているからこそ、恒常性を保っているのだ(約二ヶ月で身体の部品の殆どは新品と交換され
るそうだ)。従って、タンパク質の分解と合成のプロセスは動植物の維持にとって絶対不可欠の
過程と云ってよい。仮に、動植物が同一種のタンパク質以外は利用できないとすれば、共食い
するしかなく、従ってそういう構造の種は、最初から発生できない。
人間の体内で、タンパク質の合成と分解のプロセスは、実際にどのような割合で行われて
いるのか?
「一般のかた向け」と題するサイトの「タンパク質の合成と分解」の項を見ると、
成人は1日に約60-80gのタンパク質を食事から摂取し、それをアミノ酸に変換します。ところが、
体の中では1日に160-200gものタンパク質が合成されています。これはどういうことでしょうか?
実は合成量とほぼ同じ量の自分のタンパク質がアミノ酸に分解されていて、それをタンパク質
合成にリサイクルしているのです。つまりタンパク質の材料のほとんどは食事ではなく、自分自身
の分解産物に頼っているわけです。「タンパク質分解は食事より重要である」といっても言い過ぎ
ではありません。私達人間社会も一度作ったものをいかに上手くリサイクルするかが問題になって
いますが、生体内ではすでにきちんと行われているわけです(もっと効率が良く、しかも計画的
ですが!)
と書いてある。
体外から取り入れたタンパク質は、いったんは全部、アミノ酸に分解しなければならない。一方、
体内のタンパク質の分解と合成、或いはリサイクルの過程は無差別に行われたのではたまった
ものではない。リサイクルすべきものとそうでないものを識別する標識が必要で、このような
標識を「ユビキチン」という。
従って、タンパク質の分解系は、二つに分けられる。
すなわち(前記「一般のかた向け」解説によると)、
イ.選択的タンパク質分解⇒ユビキチン化/プロテアソーム経路
これはどのタンパク質を分解するべきかをきちんと見定めてから分解する方法です。例えば、
「ユビキチン」という印のついたタンパク質をせっせと分解する「プロテアソーム」がなんと
いっても代表です。
ロ.非選択的バルク分解⇒リソソーム経路
こちらは、なんでも分解できる万能システムです。しかし、このようなものがその辺にあって
は危険で仕方ありません。そこでこのような強力な酵素は細胞内の「リソソーム」と呼ばれる
小さな袋(細胞内小器官)にしまわれています。細胞は必要な量だけ、自身の一部をリソソーム
に運んで分解しています。
ところで、面白いというか、奇妙というべきか、体内のリサイクルシステムとも云うべき「ユビキ
チン化/プロテアソーム経路」のことが解明されたのは、ごく最近のことだ。
「有機って面白いよね!!」というサイトの「2004年度ノーベル化学賞」に、
スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2004年のノーベル化学賞をイスラエル工科大学のアー
ロン・チェハノバ教授(57)、同アブラム・ヘルシュコ教授(67)、カリフォルニア大学アーバ
イン校のアーウィン・ローズ博士(78)に授与すると発表した。細胞内で特殊な酵素の働きにより、
不要なたんぱく質が分解される仕組みを解明した。授賞理由は「ユビキチンの仲介でたんぱく質が
分解される仕組みの発見」。ユビキチンは鎖状につながって特定のたんぱく質にくっつき、それが
不要であることを示す目印となる。この目印によってシュレッダーの働きをする「プロテアソーム」
の扉が開き、たんぱく質が切り刻まれる。それまでたんぱく質の生成や働きだけに注目していた
科学界に、たんぱく質の『死』という視点を示した研究です。
と紹介している。
死と再生のドラマと云っても良いが、「死」というより、リサイクル・システムと称するほうが
より適切だと思うが...。
参考:
○「ユビキチン化/プロテアソーム経路」の詳細を知りたい人は、「有機って面白いよね!!」
及び同サイトのリンク先を参照してください。
○「プロテアソーム(たんぱく質分解装置)の分子集合機構を解明」